第4章 何よりも自分の命を大切にしろ 〜紅の花が咲く時〜
昏葉と銀時は真選組一行に連れられて、屯所に来ていた。
「勝負の場所はここだ」
そこは屯所の中で何もなく、とても広い庭だった。
「使用する刀は真剣。勝つ条件は……山崎」
「はい!」
山崎は土方のところに行き、2つの白くて長い布を渡した。
「この布を自分の体のどこに巻いてもいい。それを斬った方が勝ちだ。ただし、相手を斬ってはいけない。意味がわかるか?」
昏葉に説明しながら、土方は自分の二の腕に布を巻き始めた。
「つまり、相手を傷付けないで、かつ、布だけを斬らなければいけない。相当な技術と繊細な力加減が必要。そういうことでしょ?」
「そういうことだ。んじゃ、好きなところに巻け」
土方は昏葉に向かって布を投げ、昏葉はそれを片手で華麗に掴んだ。
「……本当にどこでもいいのね?」
「あァ、好きにしろ」
クスッと笑ってから、昏葉は自分の額に布を巻いて後ろで結んだ。ーー攘夷戦争の時のように。
「……」
銀時はそんな昏葉を見て、小さくため息をついた。
(あいつ……本気であのマヨラーに勝つつもりか?)
ーー相手を傷付けてはいけないとなると、昏葉は少なからず手加減をしなければいけなくなる。今まで、力加減を気にせずに敵を斬っていた彼女は手加減というものをすることができない。今回の条件はとても難しいと思える。
「何でこんなことになったかなー」
大きな声で独り言を言った。すると、隣に少しだけ背の低い青年が歩いて来た。
「あれ、旦那。何でこんなところにまでついてきてるんですかィ?」
「ん? それはあれだよ、総一郎君」
「総悟でさァ」
一度咳払いをしてから、男は沖田を見て言った。
「あいつは俺の……俺たちの幼馴染みなんだ」
ーーとても大切な。