第4章 何よりも自分の命を大切にしろ　〜紅の花が咲く時〜

　昏葉は軽くため息をついた。

「……証人がいなければ、正当防衛が証明できないため、私が罰せられるっていうこと？」

「そういうことだ」

　勝ち誇ったように笑う目の前の男を見て、鼻で笑った。

「歌舞伎町中を探せば、1人くらいは私が男たちに刀を突き付けられたところを見た人がいるでしょ。それとも、何？　人を殺した犯罪者の女1人のために、そんな手間がかかるようなことをおまわりさんはしないのかしら？」

　見下している様子で昏葉は土方を見上げた。

「なんだと、コラァ！　やるのか！」

「えェ、いいわよ？」

　昏葉はクスッと笑って、立ち上がり真っ直ぐ土方を見た。

「ただし……」

　昏葉は人差し指を立てた。

「私があんたに勝ったら、正当防衛が認められて、私は殺人罪の罪には問われないっていう条件付きでどう？　その方が、お互い本気で戦えるでしょ？」

　土方はそれを聞いて、鼻で笑った。

「よっぽど、刀に自信があるんだな？　お嬢さん。だが、勝つのは俺だ」

「……」

　2人は黙って睨み合っている。

「おい、トシ！　勝手に決めるな！　とっつぁんに知られたら、何言われるか……」

「心配するな、近藤さん。俺は絶対に負けねェ」