第10章 優しさに甘えて…
「話して来たで。
向こうでコード作ってくれるから、出来上がったの貰ってな?
弾けるようになったら言うてや?」
「はい、頑張ります」
「おん」
そう言って、錦戸さんは自分の場所へと戻って行った。
そして、リハーサルが始まった。
楽譜を貰ってすぐ弾ける訳じゃないから、リハーサルの時は安田さんが代わりに弾いてくれた。
「申し訳ないなぁ…」
安田さんはほぼ初見に近い状態にも関わらず、なんなく弾いてしまう。
弾けるレベルが違う…立場ないよ。
安田さんの方が良かったって言われないよう、しっかり練習しなくちゃ。
「ええ感じとちゃう?」
「せやな、亮の作った曲もええしな。
イントロのとこも、ナイスアイディアや」
「そのアイディア出したん、花音ちゃんなんやで」
「え?」
錦戸さんが、初めて名前を呼んでくれた。
「ありがとうな、花音ちゃん」
「いえっ」