第10章 優しさに甘えて…
その後は何もなく、スムーズに打ち合わせを終えられた。
「あ、お疲れ様です。錦戸さん」
「ん、お疲れ。花音ちゃん」
「さっきはありがとうございました」
「気にせんといて、大したこととちゃうから。
あ、せや。
手ぇ出してや?」
「手、ですか?」
言われた通り、右手を差し出す。
すると、コロン…と何かが乗った感覚があった。
「のど飴…ですか?」
「おん、これ結構喉にええで。
俺も職業柄喉に気ぃ使うから」
「ありがとうございます!」
「早く治るとええな」
「そうですね、早く治ってくれなきゃ困ります」
「そらそうか、お大事にな」
「はい。
のど飴、本当にありがとうございます」
「ええって、手持ちので悪いくらいやで」
そう言って、笑って帰って行く錦戸さん。