第10章 優しさに甘えて…
今日は打ち合わせの日。
そこに居るのはスタッフ数名と、私と錦戸さん。
「ここはワンコーラスでええと思うねん」
どうしてこの場に錦戸さんが居るかは、いずれ分かると思う。
「うーん、佐倉さんはどう思う?」
「私は、ワンコーラスでも良いと思いますよ。
尺的な問題なのなら、イントロ前にサビを歌うのはどうです?
アカペラか、それに近い音楽で」
「お、それええなぁ」
「そうね、ちょっとそれでやってみないかしら?
最初の部分だけ」
「え…」
う、歌うの?
「えっと…」
どうしよう…。
少しだけなら大丈夫かな?
「や、今日はええです。
今度皆が揃った時にやりましょうや」
「それもそうね」
「声、少し掠れてるで。
無理したらアカン」
と、小声で話す錦戸さん。
「すみません、ありがとうございます」
「ん、気にせんといて」