第9章 2度目の…。
「ぼやってしてたら置いてくで。
待っててやる程、俺は甘くないからな」
「まっ、待ってよー」
冗談なんかじゃなく、本当にスタスタと歩いて行くすばる。
背の高い人は脚が長いから歩くのが速いとは聞いたことあるけど、すばるも歩くの速いんだ。
「ほな、またな」
ホテルを出たところで、すばると別れた。
「うん、また」
今日のは、凄く良かったなぁ。
すばるとスるのなら、道具なんかなくても全然満足出来る。
むしろ、道具なんて無い方が良い。
すばるは、どう思ってるのかな。
同じ気持ちで居てくれたら嬉しいなぁ。
ホテルからの帰り道、1人寂しく物思いにふける。
明日の仕事は、打ち合わせだけだから歌わないよね。
声を命とするコーラスが、声を少し枯らしたなんて知られたら一体どんな顔されるんだろう?
人間だから仕方がない、って許してくれるのか。
プロ意識が足りない、って叱咤されるのか。
どちらにしろ、すばるに迷惑だけはかけないようにしよう。