第8章 お酒の誘惑
お会計のあと、大倉さんが捕まえてくれたタクシーに2人で乗り込む。
何から何まで、本当にありがたい。
「今日はありがとうございました」
「ん、気にせんといて」
小さめな声で話す大倉さん。
あ、そっか。
いくらタクシーの中でも、人が居るからね。
そのタクシーの運転手が中での会話を雑誌などで話してしまったら、顔を隠している意味がない。
私も気をつけなきゃ。
そう言えば前の安田さんの時、思いっきり会話していたような…。
それが原因で安田さんに迷惑がかからなきゃ良いんだけど…。
「どしたん?」
「あ、いえ。
なんでもないです」
「ふーん、なんか変なの。
あ、すみません。
ここで降ろしてください」
道路脇にタクシーが停まり、大倉さんが降りた。
「またな?」
自分の分の料金を払い、歩いて行く。
去り際、なんか寂しいなぁ。
仕方ないのは分かってるんだけど。