第8章 お酒の誘惑
1度、錦戸さんが遅刻に対して怒っているところを見たことがある。
まぁ、遅刻した人も遅刻した人なんだけど。
「素直に謝れば、許してくれると思いますけど」
錦戸さんは芯の通った優しい人だから。
「え、どうやって?
もし遅刻した時用に…」
大倉さんが遅刻なんて、想像出来ないけど。
「普通に、目を見て謝れば良いと思いますよ。
言い訳なんかせずに」
「…確かにそうやな。
亮ちゃんの性格を考えたら」
「だと思います。
勘なんで、あんまり頼りにし過ぎないでくださいね?」
「おん。
そろそろ帰ろっか?花音ちゃん」
「そうですね」
結構長い時間話してたなぁ。
「お会計して来るからな?
ちょっとだけ待っててな」
「え?いや、悪いですよそんな!
私も出しますって」
「んー…じゃあ、端数だけ出してくれる?」
え、出させてくれるの?
「全部出して貰うっての、気ぃ引けるんやろ?
どっかで聞いたことあるわ」
「ありがとうございます!
じゃあ、端数は私が出しますね」