第8章 お酒の誘惑
「お待たせしました、大倉さん」
「ん、行こ」
大倉さんとリハーサル室を後にし、タクシーに乗り込む。
「俺の知ってる店でええ?」
「はい、良いですよ」
「花音ちゃん、白飯好き?」
「好きですよ」
「ホンマ?俺も、好きやねん」
「ラジオで聞きました、本当に好きなんですね」
「聞いてくれたん?ありがとう。
パンや麺より、やっぱ白米やもん」
「今日はどんな和食のお店なんですか?」
大倉さんが紹介するお店って、興味ある。
「んー、なんて言えばええんやろ。
良い店やで、落ち着ける」
「へぇー、そうなんですか」
「ん、着いたで」
大倉さんがタクシー代を払い、降りる。
「本当に良いんですか?タクシー代…」
「ええよ」
安田さんと言い大倉さんと言い、男前な人が多いなぁ。
「気にせんでええから、入るで」
帽子を深く被った大倉さんが、私の手を引いて入って行く。