第3章 H27.7.29. 笠松幸男
「誕生日おめでとうございます!笠松先輩!」
今日は海常高校バスケ部主将、笠松幸男の誕生日だ。
「ああ、サンキュー」
「先輩っ、私からも!おめでとうございます!」
とてもしっかりしていて、真面目で、個性の強いメンバーの中でも頼れる主将である。
だけど……、
「おっ、おう…」
極度の女性苦手症である。
…こんな名前あるのか知らないが。
とは言え、私に対しては、不意打ちでない限り大丈夫、なはず。
それはきっと、"女の子" という認識が無いからだ。
「え、私今日女の子らしいですか?」
「いや、だから、不意打ちやめろって」
「それ遠回しに女らしくないって言ってません?」
「それはそれ、これはこれ、だろ」
「解せぬ」
笠松先輩の一つ下の学年である私だが、バスケ部のマネージャーをしているおかげか、彼と話すことに何の隔たりもない。
もしかしたら、黄瀬とは別の意味で羨ましがられているかもしれない。
笠松先輩は男の中の男!って感じがするから、普通に話せたら人気高そうだし。
だが、この調子だと期待は出来なそうだ。
「先輩、彼女欲しいとか思ったことないんですか?」
「さぁな」
「話せるようになればモテそうなのに」
「モテたいとは思ってない」
本当だろうか。
まぁ、先輩のことだ。
今はバスケが出来ればいいとか思ってそうだ。
その気持ちもわからなくはないが。
「その気持ちわからなくはないっス!けど、勿体無いような気も…」
「あぁ?嫌味かそりゃ」
「わ、黄瀬と全く同じ意見だ。珍しく」
「ですよね!ほら!さんもこう言ってることですし」
だから、興味無いんだっての
と、意見を変える気は無いようだ。
しかし黄瀬も
興味あるか無いか以前に、せめて女子と話せるようにはなりましょうよ!
と、引く気は無いようだ。
すると突然どこから現れたのか、森山先輩がやって来た。
「モテるとかモテないとか、何の話だ?」
「笠松先輩はもっとちゃんと女子と話すべきって話です」
「先輩男らしいのに勿体無い!って」
「なるほどな…。確かに言えてる」
まぁ、森山先輩に言っても無駄だろうけど…。