第4章 10:00 ”及川徹”は雨をも制す。【全年齢】
A:side
「ちゃん!大きくなったら僕たち結婚しよーねっ!!」
『いいよ!トオルちゃん!私たち、ずっと一緒だよ!』
そんな昔の夢を見た。
幼い頃の約束は残酷だ。
不確かなのに、いつまでも記憶から消えない。
あららー。
また雨か。
まぁ、梅雨だし仕方ないよね。
10時に仙台駅の伊達政宗像の所で待ち合わせ。
少し早かったかなーと思いつつ、約束の場所に15分前に着くと彼女は先についていて、水色の傘を差してそこに立っていた。
「おはよー!!ごめんね待たせた?」
『徹くん、ごめん!!!!!』
「ふぁっ!!!?ど、どうしたの?」
『また雨降っちゃった、、、。』
「いくら雨女だっていても、梅雨は梅雨だからね?」
『でも、、、この前も雨だった、、、』
ちゃんはデートの時に悉く雨を降らせる雨女。確かこの前のデートの時も途中で雨が降ってきたんだっけ。
市内の遊園地に行く予定だったけど、この雨じゃろくに楽しめなそうだ。
だけど、そこは出来る彼氏の及川さん!
雨女の彼女の為にいつも代案を用意しているからぜーんぜん問題なし。
焦る事もなく傘をたたみ、彼女の手を引いて駅構内へ入っていく。
『、、、徹くん?』
「今日はちょっと遠くに行こうか!」
『遠く?』
彼女の手を引いて改札を抜け、普段使わない路線のホームに降りる。
10分ほど待つと窓ガラスに雨粒をつけた列車が入ってきて、俺たちはふわりとしたシートに腰をかけた。
ゆっくりと走り出す電車は、ガタンと揺れ、次第にスピードを上げていく。
外の景色は流れていくけど、雨空だけが変わりなく繋がって、相向かいの窓ガラスにぶつかる雨粒が線を描いていた。
隣同士で座った彼女はいつものデートよりも少しおめかしをしていて、薄手のブラウスにカーディガン、Aラインのスカートが細い腰と長い足を際立たせていた。
1時間半くらいだろうか。
駅のホームに降りた頃には、時計はもうすぐ12時になろうとしていた。
改札を抜けるとすぐに目的地が目の前にそびえ立ち、その向こうには見渡す限りの水平線。
肌にまとわりつく潮風がひどく懐かしかった。
『え、、、?、、ここって、、、、』
「そ!水族館。」