第1章 わたしたちは 暖かいね
side/M
サプライズ訪問・プレゼントまでは順調だった。
はじめて行為に及んでしまったときから、ニノが求めてくるものにはすべて応えているつもりだ。
乱暴にするのも意図があるなんてことは分かる。
(…んな顔するなよ)
すこし視線を外すと、すぐニノはどうしようもなく寂しい顔をする。
自分だけが抱え込んだように、そのくせ俺を守ってくれようとする。
キスをするのもいつだってニノで、俺ではない。
そんなことが苦しくてしかたない。
でもその意味も答えも、俺が知るには怖すぎる。
俺もニノも、傷つくのが怖いんだ。
互いの想いが、相手のそれとは違うことが。
「そうえばさっきさぁ、あの曲ふっと思い出して」
寂しい世界を相手に見せないように、続けられている会話は嵐の歌の話になった。
アコギを手にして、探り探りのコードで歌い始める。
「おー、懐かしいね」
この歌みたいじゃんね、俺ら。