第1章 わたしたちは 暖かいね
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唇を重ねて、その熱がどちらのものかなんて分からなくなってきたら、乱暴に体を重ねる。
潤くんとの行為がキレイだったことなんて一度もない。
誰も、何も傷つかないように、互いの身体だけ痛めつける。
このまま欲望だけの関係になってしまえばいい。
きれいな思い出なんて1つもいらない。
むしろこんなの終わってしまえばいい。
潤くんには、俺みたいに醜くなってほしくないんだ。
なんて言ったら、「俺ら2か月しか違わないんだぞ」って怒るけど(そういうところが年下なんだって気づいちゃいないところがかわいい)
ほんとは脆くて儚い潤くんのガラスが、壊れるのがまだこわい。
と裏腹に存在する、ゼンブ壊してしまいたい衝動。
俺は醜くい。キレイな潤くんとは違う。
「いま、なんのこと考えてた?」
そんなことも見透かしたように、潤くんが言う。
「また行っちゃってたよ、寂しい世界」
「そう、だねぇ…」
事後、トランクス1枚の潤くんが飲んでた水を俺に傾けて言う。
「映画の話聞かせて」
シャツに手を通しながら、彼のほうから話題を変えた。
誰も、何も傷つかないように。