第5章 【SO】影山飛雄 〜言葉ハ雨ニトケテ〜
「え?」
『傘に入れって言ってるの!』
わざわざ俺の為に戻ってきてくれたのか。
「えっ、、、あざっす。」
差し出された傘に入ると、傘の中は予想以上に狭くて、身体が触れ合って、お互い気まずくなって目をそらす。
『狭いけど我慢してね。』
「っす。」
『それと傘持ってくれたら嬉しい。』
「っす。」
歩く度に俺の二の腕くらいのところに先輩の肩がとんっとぶつかって、鞄が濡れるのも忘れるほどドキドキした。
「そういえば、なんでバレー部見に来てたんスか?」
『私、前の学校でバレー部のマネやってたの。たまたま同じクラスになった潔子にバレー部に面白い一年が入ってきたって聞いて見に行ったの。』
「あの、、先輩、マネやるんスか?」
『やらないよ。もう3年だしね。』
そんな会話をしている間に駅について、俺たちは足を止める。
雨脚は弱まることを知らず、相変わらず音を立てて降り続いていた。
「じゃーね。気をつけて。」
そう言って先輩は俺に手を振って背を向けた。
「先輩!好きです!!」
『えっ?何?聞こえない!』
降り続く雨音が俺の声をかき消す。
雨は嫌いだ。
ザーザーうるせーし。
傘さすのも面倒くさい。
振り向いた彼女の腕を引いて、自分の方に引き寄せると、その反動で傘は先輩の足元に落ちた。
「好きです。」
この胸の高鳴りだけは、どうか雨にかき消されて聞こえませんように、、、
end.