第4章 【最高の1日】宍戸亮
朝食を食べていたら箸が折れた。
靴を履いたら靴紐がきれた。
家を出てすぐに黒猫が横切った。
・・・縁起が悪い。
何か悪いことが起きる前触れ?
そしたら案の定、電車で寝過ごし遅刻した。
慌てて走って転んでひざをすりむいた。
挙句、昨夜頑張って仕上げた宿題を家に忘れて怒られた。
今日は本当についてない。
こんな日はさっさと帰ろう。
そしてさっさと眠って忘れてしまおう。
そして昇降口を出たところで事件は起きた――
「おい、長太郎!急くぞ!」
「あ、宍戸さん、前!危ないですよ!!」
そんな声が聞こえて振り向くと、青い帽子が目に入ったその次の瞬間、ドンッという衝撃に思わず尻餅をついた。
「アイタタタ・・・」
「わ、わりぃ!大丈夫か?」
あぁ、本当に最低最悪な日・・・目の前に差し出された大きな手は私にぶつかってきた人のものだろう。
全く誰よ?とその手の持ち主を見上げるとそれはクラスメートの宍戸で、宍戸も相手が私だとわかると、心配そうに覗き込んだその表情が少し緩んだ気がした。
「なんだ、小宮山かよ。」
「なんだとは何よ、痛いじゃない!」
「わるかったな、俺、部活に行くところで急いでてよ。」
別に良いけど、と伸ばされた彼の手をとって立ち上がり、乱れた髪を直すように掻きあげると、その手に何かが引っかかり、 アレ?と思って手を止めると、宍戸も何かに気がついたようで気まずそうな顔をする。
「あ、小宮山・・・わりぃ・・・」
「・・・え?な、なに・・・?」
「そのよ・・・噛んでたガム・・・お前の髪に付いちまった・・・」
「えぇ!!??」
どうしてくれるのよ、と宍戸の顔を睨みつけると、すぐ間近に彼の真剣な顔があり、その顔を見た瞬間、
心臓がドクンッと大きく鼓動を打った____