第17章 【Valentine kiss】丸井ブン太
バレンタイン
街は沢山のチョコの匂いに包まれて
恋人達に届けられるのはチョコと
そのチョコにも負けない、甘い甘い
甘い、Kiss____
【Valentine kiss】~Bunta Marui~
放課後、教室は頬を染めた女の子達であふれかえっていた。
彼女達のお目当てはちょっと癖のある赤毛の彼。
彼・・・丸井ブン太の席は女の子達が何十にも囲んでいて、私の位置からはブン太の姿は確認できない。
「丸井君~、これ、食べて♪」
「私のも~!頑張って作ったんだから!」
「おぉ!みんなわりぃなぁ!サンキュー!」
「ちょっとぉ!渡したらさっさとよけなさいよね!」
ブン太の姿は確認できなくても、会話の内容と普段の彼の行動を考えれば、彼の様子など安易に想像できてしまう。
きっとチョコを受け取ったらすぐに、片っ端からそのラッピングを開けて、次から次と口いっぱいに頬張っているのだろう。
・・・な~にが私の手作りチョコが食べたいよ・・・
その光景を頬杖をついて眺めながら、数日前のアイツの言葉を思い出して、ふーっと大きくため息をついた。