第13章 【立海列伝~王者を支えるマネージャー~】切原赤也
【立海列伝~王者を支えるマネージャー~】
◆俺とあんたと夕焼けと◆
自信はあった。
ジュニアの大会では実績を残して名がしれてたし。
どうせナンバー1になるなら日本一の学校でと、必死に猛勉強して、絶対無理だと言われた立海大付属中にも合格した。
全国ナンバー1の立海大付属でナンバー1になってやる!
そう意気込んで試合を申し込み俺はコテンパンにやられた。
三人の化け物に全く歯が立たなかった。
畜生!
誰がこんなテニス部、頼まれたって入ってやるか!
そうやけを起こして逃げ出して・・・毎日ゲーセンでふてくされてた。
どんなにゲームで遊んでもちっとも面白くなくて、それどころか対戦ゲームでもボロ負けして、誰だよって思ったら、試合でボロ負けした俺に声をかけてきた赤毛の先輩で、坊主の外人先輩にラーメン奢って貰った。
テニス部に入るつもりなんてないって言ったけど、化け物たちは俺のことを見込んでいるって言う話だし、同じ中学生、ぜってー3人まとめてぶっ倒してやるって気になって、俺はまたやる気を取り戻した。
それから俺は1人、海辺の秘密の場所で特訓に励んだ。
1人で船を相手に壁打ちしてクタクタになって、もう動けねーって俺はその場に仰向けに倒れこんだ。
目を閉じてても夕焼けが眩しくて、苦しいんだけど気持ちが良かった。
あー、やっぱり俺、テニス、大好きだわ・・・
改めてそんな風に思う。
「やっと見つけた・・・」
夕焼けがさえぎられて誰かが声をかけてきた。
目を開けてみると、オレンジの逆光の中、ひとりの女がオレを見下ろし、ドリンクを差し出している。
「・・・あんた、誰?」
「あ、覚えてない?この前もいたんだけどなぁ・・・」
「この前って・・・」
「私、テニス部マネージャーで、二年の小宮山璃音、よろしくね。」
身体を起こすと、彼女の顔がよく見えた。
夕焼けに染ったその顔に思わず見惚れてしまい、慌てて顔をそむける。
「そのマネージャーが何の用っすか?俺、テニス部入ってないんすけど。」
「うん、だから、これは個人的な差し入れ。」
そう言って彼女は笑った。
俺はドリンクを受け取ると一口くちに含んだ。
身体に染み渡る感じが快感だった。