第6章 【雨の日は】不二周助
雨の日は嫌い。
あの人のテニス姿は見られないし、制服はじめっとするし、気分はどんよりするし、髪はまとまらないし。
【雨の日は】
今日は朝からずっと雨降りで、いつもは割とすぐにまとまる髪がまとまらず、もうそれだけで憂鬱で、私は廊下の窓から雨空を恨めしく見上げていた。
「アレ?小宮山さん、今日はいつもと雰囲気ちがうね?」
突然後ろから私にかけられたその声は、私が恋い焦がれる彼のもので、でもその想いは当然私の一方的なもので、それよりなにより、彼は学園中の女子の憧れで、なんの取り柄もない私なんか、同じクラスになったって話もしたことがなくて・・・
だから彼から話しかけられて、もちろんすごく嬉しいはずなんだけど、嬉しいって気持ちよりも最初にびっくりしてしまって、なんて返事をしていいかわからくて、口を開いても全然言葉が出てこない。
「あ、ごめんね?びっくりさせちゃった?」
私が何も話さないものだから、彼はちょっと困った顔をしてそう返し、私はそんな風に気を遣わせてしまったのが申し訳なくて、あ、ううん、と慌てて首を振り、勇気を出して口を開く。
「ふ、雰囲気・・・ちがう・・かな?」
「うん、____髪、のせいかな?」
私の返事を聞いて少しほっとしたような顔をした彼は、私の髪を一つまみ手にとってそう言うものだから、私は自分でもかぁっと顔が赤くなるのがわかり、その赤い顔を見られないように俯いた。