第25章 【スキ】手塚国光
手塚くん・・・?
だけど、それ以上、彼からの反応はなくて、恐る恐る顔を上げると、そこには普段と変わらない凛とした背中があって・・・
やっぱり、気づいてもらえなかったよね・・・?
残念なような、でもホッしたような、そんな複雑な感情で胸がいっぱいになる。
「小宮山、授業には集中したほうがいい。誰の為でもない、お前の為だ。」
「あ、うん、ごめんね、ビックリしたよね?、安心して、もうしないから。」
終礼の後、振り返った彼はいつもと変わらない表情で・・・
平気な顔をして必死に作った苦笑い。
分かればいい、そう言って彼が席を離れ私の横を素通りする。
「・・・だが、お前の気持ちは嬉しかった、ありがとう___」
すれ違い際、掛けられたその言葉にハッとして振り返る。
信じられない思いで見た手塚くんの後ろ耳は、ほんのり桜色に染まっているようで・・・
驚きと喜びに、彼の背中が滲んで見えなくなる。
一瞬だけ振り返った彼の口元が、ほんの少しだけ緩んで見えたのは、きっと私の気のせいではないと思う___
【スキ】手塚国光