第25章 【スキ】手塚国光
金茶に光る髪の毛は、少しくせ毛がかっていて・・・
一瞬たりとも崩れたりしないその姿勢は、いつもピンッと背筋が伸ばされていて・・・
そんな彼から微かに香るデオドラントの香りは、こんなにも私の胸を濃がさせる。
手塚国光___
言わずと知れた青春学園中等部の男子テニス部部長で、学園の生徒会長を務める男・・・
いつだって真面目で冷静沈着。
規律を重んじ、他人に厳しく、自分にはもっと厳しく、座右の銘は「敵は己の中にあり」。
テニスの腕は全国トップレベルで、将来はドイツのプロから既にスカウトされているとかいないとか。
しっかりとした背中・・・
大きくて、たくましい・・・
学ランの上からでも鍛え上げられているのが分かるそれを、こうしてジッと見つめていられるのは、後ろの席の私の特権。
そっと人差し指を延ばし、あなたの背中に触れてみる。
震える指先が綴るのは、カタカナでたった二文字。
ス、キ___
精一杯の私の意思表示。
胸がどうしようもなくバクバクして、顔は火を吹きそうなほど熱くて、とてもその背中を見てはいられなくて・・・
一瞬だけ、ピクっと手塚くんの背中が震えた気がした。
ビクッと私の肩も跳ねる。
慌てて腕を引っ込めると、ギュッと瞳を閉じて身体を縮こませる。