第24章 【キミの名は】不二周助
「40円のお返しになります、ありがとうございました。」
キミのしなやかな指先が、そっと僕の指に触れる。
コインを落とさないように、さり気なく添えられた手は優しい気遣い。
少し冷たい、でも暖かい指先・・・
僕はいつもその指先に触れたくて、わざと釣り銭の出るよう会計をする・・・
小宮山さん・・・
胸の名札は、とうぜん苗字しか書いてなくて・・・
キミの下の名前は、一体、なんて言うんだろう・・・?
「ありがとうございます、27円のお返しになります。」
ドアを開けてコンビニを出る直前、キミの指が同じように次の客に触れるのが目に入る。
嫌だな、そのキレイな指が他の人に触れるのは・・・
キミの指先が触れた指にそっと唇を寄せた___
「あ、不二ー、さっさと帰ったと思ったら、こーんなとこで寄り道ー?」
突然、背中にかかる衝撃・・・
英二、いつものことに驚きもせず返事する。
缶コーヒー?、んなの自販機で買えばいいじゃん!、なんて、僕の手の中を覗いていうから、いいんだよ、ここで、そうクスッと笑って返事する。
「そういや、不二、知ってるー?、ここですんげー可愛い子、バイトしてんだよん?」
その英二の言葉に、ドキリと心臓が跳ねる。
いるかにゃー?、そう手でひさしを作り店内を眺める英二の視線が、小宮山さんのところでピタリと止まる。
「あ、いたいた!、オレ、ちょっと、声、掛けてきちゃおうかにゃー?」
ダメだよ、英二、笑顔のまま英二の顔をジッと見ると、そゆこと・・・、そう言って、英二は首をすくめた。