第22章 【神様からの贈り物】千石清純
「きぁっ、痛ぁい!」
目の前を歩く女の子が足を滑らせて、視界に飛び込んできたピンクのレース。
お、ラッキ〜♪なんて語尾を上げて、そのサービスショットをこっそり楽しむ。
昨日、大都会に観測史上初の積雪をもたらせた寒波は、次の日の今朝も歩道をツルツルに凍らせて、アイスバーンに慣れていない女の子の後ろを歩く俺をこうして喜ばせてくれる。
「なーに鼻の下、伸ばしてんのよ、このスケベ。」
突然後ろから聞こえてきた少しくぐもった幼馴染みの声。
振り返るとマフラーで顔の半分を覆った彼女が、寒そうに身をかがめながらジトーっと俺を軽蔑するような目で睨んでいる。
「酷いなぁ、璃音、あの子、大丈夫かな〜?って心配して見ていただけだよー。」
「はいはい、で、本当は?」
「神様からの贈り物、ラッキ〜♪」
思わず飛び出した本音と締まりのない顔に、彼女はますます呆れた顔をして、どんなエロ神よ、そうボソッと呟きながら深いため息をつく。
「キヨの前を歩いたら、絶対転ぶ気がする。」
「だろうね、今まで前を歩いていた子、全員転んでるから。」
「うわ、疫病神。」
前、行って、そうカバンで俺の背中を押して、絶対後ろに来ないでよ、なんて警戒する彼女に、んーって少し考えて、それからチラッと後ろの人波を確認した。