過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第8章 何故、そんな事を?
調査兵団に着くと、朝一で連絡をしていた事もあって
玄関でリヴァイ、ハンジ、ミケ、ナナバが二人を待っており
馬車へ駆け寄ってきた。
「ナナシっ!?本当にナナシなんだねっ!!良かった、無事でっ!!」
「顔色悪いけど怪我は大丈夫なのっ!?皆心配したんだからねっ!!」
ハンジとナナバが涙ぐみながら声を掛けたが、
ナナシは何と言って良いかわからず口を噤む。
心配かけたのは申し訳なかったが、
もう二度とここに戻る気は無かったのだと
はっきり告げるべきなのだろうか?
目を開けているのも辛くなり、
馬車の中で眠ってしまいそうになっていると、
またエルヴィンがナナシの身体を横抱きに持ち上げ
馬車から降りた。
「ハンジ、ナナバ。すまないがナナシは今酷く衰弱しているんだ。
早く部屋で休ませてあげたい」
「あ、そ、そうだよね!ごめん!」
ハンジとナナバはエルヴィンに道を開けて二人が通れるようにし、
リヴァイ達四人はそれに随行するように着いて行く。
「一応、ナナシの部屋は綺麗にしておいた。元々物が少ない上、
整理されてたから時間も掛からなかったしな」
ナナシが帰ってくるという知らせを受けたリヴァイは
朝一でナナシの部屋を掃除したらしい。
怪我人(かもしれないナナシ)を、不衛生な部屋に寝かせられるかっ!
というのがリヴァイの主張だった。
掃除に駆り出されたミケがそれに答えるように
「スン」と鼻を鳴らすと、違和感に気づき足を止めた。