過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第5章 もう逃さない
豪華なシャンデリアを見上げながらそう思っていると、
ふっと視界に影が落ちた。
どうやら隣に誰か来たようだ。
相手にするのも面倒だったが、どんな人物かで対処も変わるので
チラリと目を向ける。
上質なタキシードの上からでもよく分かる鍛え上げられた肉体が
まず目に入った。
兵士か何かだろうか?
貴族ではあり得ない素晴らしい肉体だ。
顎を上げなければ顔も見えないような長身に自然と顔を上げると、
そこにはいるはずの無い人物が立っていて、
ナナシは反射的に身を引いた。
だが、それを読まれていたのかすぐに屈強な手に腕を捕まれ、
逃走に失敗する。
「探したぞ、ナナシ」
エルヴィン・スミスのゾクリとするくらい色気のあるバリトンボイスに
身を固くし、何とかその手から逃げられないかと
必死に藻掻くがびくともしなかった。
撃たれた傷が響き、身体に力が入らず浅い呼吸を多く繰り返す。