過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第36章 ナナシの遺したもの
「【私の身体はどうやらもう寿命が尽きるようだ。
だが、その前にエルヴィンに抱かれようと考えている。
これは自分から望んだ事なので、どうかエルヴィンを責めないで
欲しい。悪いのは全部自分だ。契約途中でいなくなる私を
許せとは言わないが、私は調査兵団の皆が―――・・・】」
そこでナナバは歯を食いしばってボロボロと涙を零し、
ハンジは声を上げて号泣した。
「み、皆が・・・・」
「ナナバ、もう良い。寄越せ。俺が読む」
リヴァイはナナバから紙を引っ手繰ると、続きを読み始めた。
「【私は調査兵団の皆がその夢を叶える事を遠い空で祈っている。
追伸:また会えたら美味しいものでも食べよう。その時は
私が腕を振るっても良い。経費は全部エルヴィン持ちだ。
あと、エルヴィンが盗んだままの私の下着3着を取り戻して
焼いておいてほしい。戻ったら、エルヴィンをフルボッコに
するから医者の手配も頼む】・・・以上だ」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
皆押し黙った。
感動的だったはずの遺書なのに、何かがおかしい気がする。
遺書らしからぬ遺書にハンジとナナバは涙を流しながらも、
何かを考え込み始めた。
・・・まぁ、ナナシらしいと言えばナナシらしく、
皆に心配させまいと明るく振る舞っただけの遺書にも思えなくもない。