過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第35章 最期の夜明け
「気持ちの悪いものを見せてすまない。
本当は誰にも見られない所で一人で逝こうと思ったのだが・・・
欲が出てしまった。最期くらいお主と一緒にいたかった。
巻き込んで・・・本当にすまない」
「そんな謝罪どうでも良いんだっ!どうすれば延命できるっ!?
・・・そうだ、あの薬はっ!?」
「・・・こうなってしまえば、もうどうにもならないんだよ、坊」
息を呑み絶句したエルヴィンに、ナナシは崩れていない腕を伸ばした。
「こんな満たされた気持ちで逝けるなら、悪くない。
だから、気に病まないで欲しい」
「俺の心配などしなくて良いんだ、ナナシ」
何故死ぬ時になっても、他人の心配をしてしまうんだっ!?
握りたいのに崩れてしまうかもしれない伸ばされた手を
呆然と見つめていると、ナナシから
「気持ち悪くないなら握って欲しい」と言われ、
エルヴィンはその手を掴んだ。
そしてふと思い出す。
「そうだ!あの『心臓』は?あの『心臓』をどうすれば良い!?
今すぐここに持ってこようか!?」
執務室に置いたままの『心臓』を取りに行こうとするエルヴィンを、
ナナシは引き止めた。