過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第33章 ナナシの想い
ソロモンの『心臓』は手に入った。
だが、何となくナナシは手放しにそれを喜べなかった。
机に『心臓』を置いて、椅子に座ってそれをじっと眺める。
所々欠けてしまったが、その『心臓』は確かに脈動を続けていた。
暫く眺めていたが、徐ろに容器の蓋を開けたナナシは
『心臓』を取り出し、ナイフで己の手首を斬ると
『心臓』に血を注いだ。
血を注ぐと『心臓』は血を飲み込むように吸収し、
欠けた箇所が除々に復元されていった。
―――――これは元々ナナシの『心臓』だった。
だが、ソロモンと契約した際、互いの心臓を交換したのだ。
ナナシが所有していた本物のソロモンの心臓は、
妖であるナナシの身体に耐えられないので、
蒼い石に結晶化され、『核』として複製し使用されていた。
今ナナシの胸に埋まっている蒼い石がそれだった。
だから、ナナシの血を与えれば『心臓』は養分としてそれを吸収し、
欠けた部分を再生する事が出来る。
『心臓』が元の形を取り戻すまで血を与え続けると、
それを容器に戻し、暫し思案する。