過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第31章 夢の残骸
「待たせて・・・すまなかった、ソロモン。おかえり」
ギュッと『心臓』を抱き締めるナナシの眼は酷く虚ろで、
エルヴィンは何か声を掛けなくてはと思ったが、
普段よく回る舌がこういう時に限って回らない。
悲願を達成したナナシは、約束通りその生命が尽きるまで
自分の傍にいてくれるのだろうか?という不安が過ったが、
突然ナナシが苦しそうに咳き込み始めたので、
その思考を打ち切り駆け寄る。
ゲホゲホと激しく吐血を始めたナナシを抱き上げ、
リヴァイに周囲を警戒させながらミケのいる門前まで戻ると、
急いで馬車に乗って調査兵団本部を目指した。