過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第31章 夢の残骸
「夢というのも・・・難儀なものだな。
人間は夢に生かされる部分が大きいだろうが、
逆に夢に殺される場合もある。分不相応な夢を抱き続けることが
果たして幸か不幸か・・・・」
「耳の痛い話だ・・・・」
スンと鼻を鳴らしながら言ったミケにナナシは自分の失言を自覚する。
調査兵団も壁外に行くという大きな夢を抱いている人間の集まりだった。
「・・・すまん。失言だった」
「いや、君の言う事も一理ある。だが、我々はその夢に
殺される覚悟のある人間の集まりだと自負している。
我々の夢が分不相応かどうかはわからないが・・・・」
団長の顔で告げたエルヴィンにナナシは「そうだな」と返す。
「ならば訂正しよう。夢で終わらせるか、夢を叶えるかは
自分達次第だ。私は前者だったが、お主達は後者になれ。
後悔だけはするなよ」
「勿論だ」
「当然だ」
「無論だ」
三人の迷いのない返事を聞いて満足したナナシは、
調査兵団の夢が叶うように心の中で願った。