過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第31章 夢の残骸
「ナイルと何を話していた?」
男共を追い出し、馬車の中で着替えを済ませたナナシに
開口一番そう聞いてきたのはエルヴィンだった。
ナナシがテーブルに額を押し付けていたので、
彼のおでこが赤くなっていて少し笑える。
嫉妬心丸出しの男に「別に」と返すと、全員で馬車に乗り込み、
目的地へと出発した。
馬車内でも不機嫌そうにしているエルヴィンに、
ナナシはこの男はどこまで嫉妬深いのだろうかと呆れる。
これでは迂闊に誰かと立ち話も出来やしない。
「ただ、エルヴィンはエルヴィンだと話しただけだ」
「それは・・・どういった意味で?」
「秘密だ。・・・・それより、立体機動装置に不備はないか?」
急に真剣な表情になったナナシにエルヴィン達も気を引き締める。
目的地である『カール・フォン・ブラウヒッチュ』の領地に入った為でもあるが、
それよりも領地に入ったと同時にカールの存在を認識したからだった。
恐らく向こうも自分が領地に入った事に気付いただろう。
ねっとりとした殺意が此方に向けられ始めた。