過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第30章 続・不運な男
「私のナナシにセクハラ行為をするな、ミケ」
「セクハラじゃない。ただ匂いを確認したいだけだ」
「女性にそれをしたらセクハラで訴えられるぞ」
「ナナシはいつも許してくれてる」
「今のナナシは『女性』だ」
静かにその会話を聞いていたリヴァイは、
何故エルヴィンがナナシの身体の秘密を暴露したのか理解した。
要はミケに対して予防線を張ったのだ。
いつもナナシの匂いを嗅ぎまくるミケを
エルヴィンがおもしろく思っているはずはなく、
ならばせめて女性体でいる間は匂いを嗅ぐな・・・・という事だろう。
どこまでも独占欲の強い男だと舌打ちが出る。
「ナナシは俺に匂いを嗅がれるのは嫌か?」
とうとうナナシ本人にまで飛び火した言い争いに
嫌気が差したナナシは黙ったまま走行する馬車の扉を開けると
「これ以上下らん事を言い合うなら、私は今すぐ一人で行く」
という脅しを掛けて二人を大人しくさせ黙らせるのだった。