過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第26章 最後の眷属『ヤンデレ』
夜が大分更けた頃、ナナシの部屋で飲み会をしていた面々は
大量の酒を摂取したせいか、日頃の疲れが溜まっていたせいか
船を漕いだりする者が現れ始めた。
ハンジはナナシのベッドで大の字になって眠っているし、
リヴァイはいつもの仏頂面で虚空を見つめているし、
ミケは椅子に座りながら居眠りを始めたりしているし、
エルヴィンは・・・ナナシを自分の膝に乗せながら
耳元でずっと愛を囁いている始末である。
ナナシも酔っ払ってはいるが、エルヴィンの
(愛の囁きという)精神攻撃を食らい続けているので、
どんどん酔いが覚めてきている。
「それでナナシ・・・俺と君の家を買おうと思うのだが、
どこが良い?理想を言えばシーナだろうが、そこだと
調査兵団までの通勤が大変だし、やはりローゼの兵団本部近くは
どうだろうか?」
「・・・・アー、ソウデスネ」
「庭付きの一戸建てが良いな。君が料理を作って
待っててくれていると思うと頑張って仕事を片付ける気になれる。
あ、君もずっとここで教官をやってくれるというなら、
料理当番は代わりばんこにしよう」
「・・・・アー、ソウデスカ」
「寝室のベッドはキングサイズを二人で使おう。
その方が何かと便利だし」
「・・・・・・・」
もう返事する気力も起きない。
話が勝手に進んでいってしまっている。
大体、この男に『話し合う』気など無いのだ。
あるのは、『自己完結』『事後承諾』のみだろう。
思わず大きく溜息を吐くと、エルヴィンが心配そうな声を上げた。