過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第24章 諱(いみな)
「苦労ばかり掛けてすまぬな、ツクモ」
「ナッちゃんはうちではあんま苦労掛けんからなぁ。
今くらいが丁度ええよ」
ポンポンとナナシの頭を撫でるツクモは、
まるで『お兄ちゃん』のようでこそばゆくなる。
「これいつもの薬や。そろそろ無くなる頃だと思ってな・・・」
「いつも面倒を掛けるな・・・」
首に薬入りのポシェットを掛けられたので、
そう言うとツクモは「気にせんといて」と笑った。
そして突然ドンッとツクモから風呂敷に包まれた重箱とお酒を渡され、
ナナシは目を丸くする。
「たまには『異世』の食べもん食わんと、身体に良くないで。
寒うなってきたし『おでん』を作ってきたんや。
あとそれに合う酒」
「あ、ありがとう・・・。お主の作るおでんは美味いから嬉しいぞ」
風呂敷はまだ温かく、食欲の唆るおでんの匂いが鼻腔を擽った。
「沢山作ったから、たんとお食べ。じゃあ、戻るわ。
身体にはくれぐれも気をつけてな」
フッと陽炎のように消えたツクモに心の中でまた礼を述べると、
ナナシは宿舎へ足を向けた。