過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第24章 諱(いみな)
―――身体が重い・・・
遺品整理や諸々の手続きも粗方終わり、
調査兵団に通常通りの生活が戻り始めた頃、
ナナシは身体に異変を感じていた。
ツクモから貰った薬で騙し騙し使っていたが懸念通り、
この身体の寿命はあと少ししか無いだろう。
ポシェットから残り少ない薬を取り出し、喉の奥に流し込む。
「・・・・苦いな」
自分はあとどれくらいエルヴィン達の役に立てるだろうか?
最近ではソロモンの心臓の事より、その事ばかり考えてしまっている。
エルヴィンがソロモンの孫だから・・・という理由だけではない事が、
ナナシにとって余計心を苦しくさせた。
ナナシにとってソロモンは『絶対』だった。
それなのにいつの間にかエルヴィンは、
そんなナナシの心に強引に入り込んで居座ってしまったのだ。
自分はそんな薄情な男だっただろうか、と思わずにはいられない。
ソロモン以外の男を愛するなんて思いもよらなかったが、
この気持ちを堂々とエルヴィンに伝えるつもりはなく、
訪れる最期の時までナナシは彼を見守りたいと思っていた。
これ以上エルヴィンとの距離を縮めるべきではないから。
ナナシは自嘲気味に嗤うと、今日の仕事をするため自室を出た。