過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第16章 襲われる
リヴァイ、ハンジ、ミケ、ナナバは地下牢から
走り去ったナナシを探していた。
怪我人の癖にナナシの足が早かったせいで見失ってしまったのだ。
ミケの鼻を頼りにしたかったが、ナナシにやられた股間が
痛んでそれどころではなかったので己の足を使って探すしか無く、
リヴァイがイライラしながら廊下を進んでいると
夥しい殺気を感じ取り、足を止めた。
―――その刹那、断末魔のような悲鳴が兵舎に響き渡り、
リヴァイ達は悲鳴が上がったと思われる部屋へ向かった。
その部屋に飛び込むと、異様な光景が目に入る。
血だらけになった四名の男が床に転がっており、
部屋の中央には衣服を乱したナナシが佇んでいたのだが、
異様だったのはナナシの姿だった。
ナナシから伸びている影が鋭利な刃物となって
床に転がる男を執拗に斬りつけていた上、
その背中には黒い羽根が生えているように見えたのだ。
リヴァイ達が悪魔のような堕天使のようなナナシの姿に
言葉を失っていると、ナナシが何の感情も映さないガラスのような目で
リヴァイ達を見据えて、男達に伸ばしていた影を引っ込めた。
そして、その場に膝をつき咳き込む姿を三人は呆然と見ていたが、
ナナシが吐血していることに気づいたリヴァイは急いで駆け寄り、
自らのジャケットを彼に掛け背中を擦った。