過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第15章 契約の穴
「ナナシ、君は【一つでも破ったら契約破棄とみなす】という
一文を契約書に記すべきだったんだよ」
最初からこの男は契約の穴をわかっていたのだ。
わなわなと怒りが込み上げてきたが、
エルヴィンを言い負かせる言葉など浮かんでこない。
良くも悪くも【契約】に縛られるナナシは、
エルヴィンが撤回しない限り自由に動くことが出来ない。
口約束は【契約】とみなされないのだ。
それも【契約】と思い込んでいたナナシにも非があるので
何も言い返せない。
絶望を顔に貼り付けたナナシに、エルヴィンは真剣な表情で
「君を手放す気はない」とはっきり告げる。
「君が何故私達を避けたり、私の父親の事を調べたりしたかは、
今は聞かないでおいてあげよう。その代わり以前と同じように
調査兵団の教官として、ここにいてほしい」
「・・・・そ、それは・・・・ダメだ・・・・」
「そうか、ならばまた君を拘束して言う事を聞くまで
説得するだけだ。君の身体は随分と快楽に弱いらしいから、ね」
クスクス微笑うエルヴィンに不穏なものを感じ、
ナナシは本能的に一歩下がる。
「何なら君の身体の事をリヴァイやハンジ達に教えてやっても良い」
「や、やめ・・・」
「皆どう思うだろうね。ハンジなんかは喜んで君の身体を
弄り回すだろう」
「やめろっ!ふざけるなっ!それこそ契約違反だっ!!」
「ふざけているのはそちらだろう?ここから出て行こうなどと
思わないことだ」
「・・・ぅ・・・・・」
精神的に追い詰められたナナシは、
地下牢から逃げるように走り去って行った。