過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第2章 赤い世界に射し込む蒼色
「私の身体はどこにあるっ!?急いで戻らねば・・・っ!」
「ま、待ちぃ!その身体で戻る気なんっ!?無茶や!
義体かて、まだ修理中でとても動ける状態じゃ・・・」
「良いから案内しろ。あと十日しか時間が無い」
「どういう事や?」
落ち着けと諌めてくるツクモにナナシが焦っている理由を告げた。
「コンラッド・・・『迅鬼狼』の生き残りから聞いたのだ。
今日から十日後に開かれる夜会に『心臓』の持ち主が
出席するらしい、と。だから行かねば・・・」
「あー・・・それで焦ってたんやな。でもナッちゃん、
今あの身体に女になる余力は無いで?普通に立って歩くのも
辛いはずや」
「それでも、構わん。あの身体が無いと向こうへ行けないからな」
ナナシは高位の妖なので、長時間向こうの世界に滞在出来るが、
媒介になる物が必要だった。
それが向こうの世界で使っていたソロモンと『契約』した義体で、
ソロモンと契約しなければ七十年も向こうの世界に行けなかっただろう。
人間とは違い、妖にとって『契約』とは重要なものなのだ。
ただ、その契約も契約者であるソロモンが死んでしまった事で
綻びが見え始め、向こうの世界での滞在時間が
あと一年あるかないかという状況だった。