第1章 【山口忠】君の隣は俺がいい。
「よし、10分休憩ー!」
烏養コーチの一言で、俺とツッキーは水を飲みに体育館外にある冷水機へ行くことにした。
そこでゴクゴクと喉を鳴らしながら水を飲んでいると、聞き慣れた声が後ろから呼びかける。
「あれー?蛍と忠じゃん!」
……相田。
まだ学校いたんだ。
少し明るめの髪をふわふわと揺らして、彼女はこちらに近付いてくる。
「汗だくだねー!部活頑張ってんの?」
「うん、まぁね」
近付いては来るけど、彼女はいつも、俺じゃなくてツッキーに話しかけるんだ。
そんなことも、もう慣れてるんだけど。
「ツッキー、戻ろう。相田、またね」
「うん!忠もがんばれー!」
その言葉に、思わず頬が熱くなる。
俺は、そう言ってもらえるだけで嬉しいんだ。