第15章 温かい時間
言葉のない私に彼は優しい声で
安田「ゆめちゃんは、ほんまに優しいやねぇ」
私は首を振り続けました
私は大好きな人をただ助けたかっただけだから
下心一杯の看病だったから
安田「ほんまに、ありがとうなぁ」
そう言うと椅子から立ち上がると
安田「そろそろ、帰らんとなぁ」
「あっ、そ、そうですよね」
私も焦りながら立ち上がった
安田「ほんまはさぁ、
もっと一緒におりたいやけど
また、熱が出てきたらゆめちゃんが
今日も寝られんくなるもんなぁ」
そう言うと私に笑顔を見せてくれたのでした
「あ、あのぉ」
私は、彼の本意を聞きたくなった
彼は私の事をいったいどう思っているんだろうか
安田「ぅん?」
彼は静かに振り向いた瞬間
私の心臓は大きな音をだし始めた
私の次の言葉を待ってる彼の顔に私は
「お、おにぎり...わ、忘れてます....」
そう言うと、彼の分の袋を突き出した
私の勇気がしぼんだ瞬間でした
安田「うわぁ、ほんまや忘れてたわぁ」
「忘れられると、明日もおにぎりで
終わってしまうんで」
私は、少し意地悪気に言ってみせた
安田「ほんまやぁ、危ないところやったなぁ」
そう言いながら彼はクスクス笑っていた
そして、私から袋を受け取ると
安田「ほんなら、またな」
そう言うと玄関に歩き始めたので
私は後を追いかけ
「車まで送りますよ」
安田「ええで、ええで、
ゆめちゃんは少しでも寝とき」
そう笑顔を見せながら靴を履くと
くるっとふり返り
安田「ゆめちゃん、おおきにな、また来るなぁ」
その言葉を残して扉の向こうに消えてしまいました
彼は、私の事をどう思っているのだろうか
友達?
また来るって、遊びに来るのだから友達だから
それとも、少しは私に気があると
調子に乗った考えをしてもいいのか
私は扉の閉まった後も玄関に立ち尽くしては
一人で彼を思って痛い自分の胸と
闘っていたのでした
そして、温かい時間の終了に
悲しさ一杯でいたのでした