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( hq!!*短編 ) 病んじゃう黒尾さん ( 黒尾鉄朗 )

第1章 本編


どん。
そんな擬音が相応しいくらいの強さで、わたしは彼に壁へと押し付けられていた。
それは今噂の「壁ドン」なんて生易しいものじゃなく。もっと暴虐的で、非平和的なもの。その証拠に、肩がぎしりと軋む。

「なぁ」

ぞくり、と身体が震える。彼…黒尾鉄朗の声に、だ。
もっと言うと、クロの鋭い目に。肩から伝わる腕の圧迫感に。あまりにも近いクロとの距離に。
心が、悦んでいる。

「な、に…?」

わたしはクロを真っ向から見つめて問い返す。するとクロは更にわたしに込める力を強める。
あぁ、そんなにもわたしのことを離したくないんだ。
そう思うだけで、興奮が収まらない。身体が火照る感覚が分かる。

「なに、じゃねぇだろ」

ワントーン程低くなったクロの声に口元が緩みそうになる。でも今笑ったら、痛みを感じる前に気絶しちゃうだろうから必死に我慢。

「お前さぁ…何回言ったら分かる?」
「っ、…」

首元に手がかけられる。喉元が絞められていく。
息が出来なくて苦しい。はずなのに、何故か歓喜の思いが止まらない。
血流が頭に集まって熱くなる。よく分からないけど涙が出る。それでもクロは止めることを知らない。

「俺が見てないところで、俺が知らないところで」

身体が、浮き上がっていく感覚。

「勝手に男と遊んでんじゃねぇよ」
「く、はっ」

手が唐突に離されて身体ががくんと落ちる。そのまま床に崩れて咳き込むと、クロが冷たい目で睨みつけてきた。
その中に、愛がある。
こんなに死にそうな状況でもこういうことを考えてしまうわたしを殴って欲しい。
むしろそれが本望だ。クロに愛情の印として痣を付けられるなんてこの上ない幸せだ。

「それとも何?俺から逃げたいの?」
「違うっ」

その言葉を聞いた途端にわたしは勢い良く反論する。それは違うよ。逆にこうやって愛してほしくてやってるのとほぼ同じなんだから。
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