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この想い、届け ~のえる~

第1章 出会い。



それは、突然だった。

本当に突然の出来事だった。

雷が落ちたというか、体中が痺れたというか。

全てが止まって見えた。

「おい、如恵留?どうした!?」

「え?」

あまりの衝撃で俺は立ち尽くしていた。

眩しいライト、大音量の音楽…

「やばっ」

舞台中だった。

急いで立ち位置を移動する。

こんな事は初めてで動揺が隠せない。

袖にはけると仲間たちが次々に声を掛けてくる。

「なに?どうした?」

「体調悪い?」

何も言えず黙る。

「振りが飛ぶなんて如恵留らしくねーな!」

返事をするどころか、俺はまだ衝撃に耐えていた。

何だ、これは。

ビリビリと電流が流れたような、それなのにフワフワと浮くような…。

「おい、次の出番行くぞ!」

慌てて立ち上がる。

冷静に。

落ち着け、俺。



ステージに戻り、歌って踊る。

客席にライトが当たる。

「…っ」

周りのお客様と同じように舞台を真剣に見つめる一人の女性。

目が離せない。

キラキラと輝いた瞳でステージを見ている。

その目線の先は…?

気になって、気になって、気になって…。

ライトを浴びながら踊る俺は、視界に入ってる…?

あぁ。

あの衝撃の理由が分かった。

俺は彼女に一目惚れしたんだ。

客席の彼女に一瞬で心を奪われてしまったんだ。



ステージを終えて帰宅の準備をしながら、彼女の姿を思い出してた。

キラキラとした瞳で見つめていたのは誰?

あいつか?こいつか?それとも…

「如恵留、飯どーする?」

「あ、今日はパス。」

「やっぱ体調悪いんじゃね?」

「いや、大丈夫。」

帽子を深くかぶり、荷物を持ち、仲間たちと劇場裏のドアを開ける。

たくさんのファンの子たちがお疲れ様と声を掛けてくれる。

いるわけないよな…

いや、もしかしたら…

僅かな期待で目線を少し上げる。

そこには彼女がいた。

でも、彼女の目線の先は美勇人だ。

あの瞳は美勇人に向けられている。

俺の前を行く美勇人だけを追っている。

そうか。

俺じゃないんだ。

「じゃ、明日。」

「今日なんか変だから早く寝ろよ?」

「仲ちん、ごめん!じゃあ!」

いつもよりも足早にその場を立ち去る。

心がモヤモヤして、叫びたい気分だ。

きっと明日になれば忘れる。

忘れる…。




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