第12章 苦さと、甘さと
菅原
真っ暗な空に星が綺麗に瞬いている。
早く向こうに着くために、12時頃には此処を離れる。
3日という日数はとても短く、あっという間のものだった。
家を出て、数十歩いたところにある彼女の家を目指す。
菅(暗いし、危ない。それに、同じ方向だからっ!それ以上は、考えないっ!)
自分に言い聞かせて、歩き始める。
家から出てきた彼女の姿が目に入る。
なんでもないような振りして、声をかけると、
彼女は手を振って応じた。
小走りにこちらへ向かってくる。
そんなことをすれば…。
案の定、転びそうになる。
手を引いて腕の中に
菅「危ないなぁ。ほんとそそっかしいな、藍蘭は。」
こんなのも、もう慣れっこになってるからかな?
動揺もしないし恥じらいもないまま、君は
藍蘭「ごめんね、考支。ありがと。」
と、言って俺から離れていく。
来る前に言い聞かせた言葉なんて
なんの抑止力もなかった。
黙って差し出した手。
菅「ほら、また転ぶだろ?」
ごめんね。と言って繋がれた手を引く。
いつかの日の様に並んで歩く。
菅「ずっと、傍に居て見ててやるから離すなよ?」
うまく笑えただろうか。
苦い想いを押し込めての表情なんて、見せられない。
少し力の入った手を、優しく握り返す手の温もりは、
心地いい筈なのに、何故か胸を締め付けた。