第14章 君への想いと花言葉
それは突然のことだった。
「ゴホッゴホッ……」
「おい、神楽。どうしたんだ? 風邪でもひいた……」
その姿を見た銀時は固まった。
「おい、神楽! 大丈夫か!?」
「ゴホッゴホッ……」
神楽の口から出てきたのはいつも吐いているゲロではなく、綺麗な花だった……。
ーー花吐き病。通称、嘔吐中枢花被性疾患。片思いをこじらせると口から花を吐き出すようになるという病気のこと。
今、江戸の町で流行している病気だ。それに神楽がかかってしまった。だが……。
「……お前……本当に好きな奴いないのか?」
「……うん……」
神楽には好きな人がいなかったのだ。
「……考えたりぼーとしてたりすると、誰かを思い出すとか……本当にないのか?」
「……考えることと言ったら、酢昆布のことくらいアル」
「……」
「ゴホッゴホッ」
そう言って、神楽はまた花を吐いた。
「……神楽……」
「……何アルか?」
「……さっき、何を考えていたんだ?」
「……」
神楽は気まずそうな顔をして万事屋から出て行った。
「おい! 神楽!」
置いていかれた銀時は顔を真っ青にした。
「……まさか、俺じゃねェだろうな……」
銀時は首を振った。