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Mein Held(進撃の巨人:ジャン夢)

第1章 Mein Held


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 火葬式の夜、アグネスともマルコとも誰とも分からなくなった骨を手にジャン・キルシュタインは赤くも燃え上がる炎を見つめていた。送り火を見届ける他の同期達の啜り泣きが聞こえる。ジャンの胸にも虚しさを覚えた。けれどそんな中でも、あっけない仲間の死を体験したジャンの脳裏に不思議と浮かんだのは「ジャンは『今、何をすべきか』明確に分かる」と言うマルコの生前の言葉と、「生きて」と言ったアグネスの最期の言葉だった。

 巨人の恐怖を間近で見たというのに。巨人が人を喰らう瞬間を思い出しただけでも震えが止まらないというのに。兵士なんか、今すぐにでも辞めたいというのに。考えれば考えるほど、行くべき道がはっきりと分かってしまう。進むべき道が調査兵団である事を理解してしまう。怖い、嫌だ、俺じゃなくても死に急ぎ野郎みたいなヤツが入りゃあ良い。そう思う。

 しかしどれほど様々な言い訳を並べても、頭から「調査兵団」の文字が消えない。何よりも亡くなった二人の言葉は、ジャンに自分の信じた道を歩むよう後押しするようで苦しい。命を救えなかったアグネスからの「願い」。死を見届ける事さえ出来なかったマルコからの「認め」。どちらもジャンと共に生き、ジャンの人柄を見続け、ジャンの未来に希望を見出した者達からの、大切な言葉だ。

 ここで逃げ出しても誰も怒りはしないだろう。だが、二人の想いを無下にも出来ない。仲間の死を無駄にはさせないという性に合わない想いが胸を占めた。未だに嫌だ、逃げたいと叫んでいる心に耳を塞ぎ、ジャンはその場にいる同期達に涙の宣言をした。
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