第13章 第12セット
*優side*
しばらく二人とも黙ったままで、緩やかな風が吹く音だけが聴こえた。
沈黙に耐え切れず、私はケータイを取り出し、文字を打ち込み徹に見せる。
«迷惑かけてごめん。»
すると徹は溜息をついて、
及「迷惑だなんて思ってないよ。優のことが心配なだけ。」
«けど、私のせいで徹は泣けてないよね?私が徹に余計な心配かけたから、、、»
及「それも違う。泣く必要がなかったから泣かなかっただけ。春高予選でリベンジするから泣かない。」
私がまた文字を打ち込もうとすると、
及「もういいから。今は俺よりお前のほうがつらいんだから。俺より自分の心配をしなさい。」
いつもの軽い感じの喋り方なのに、いつもの何倍も心が落ち着いて、引っ込んだはずの涙がまた溢れてきた。
及「そうそう。辛いときは思いっきり泣きな。俺が傍にいてあげるから。何があったかは話したいときに話せばいいよ」
試合で疲れてるはずなのに徹は私をおぶったまま家まで送ってくれた。
見慣れたはずの徹の背中はとても大きくて、それでもって暖かかった。