第7章 旅行編
「いぎゃあぁああああッッ‼︎
もういやだ‼︎帰りたいんだぞ‼︎」
「じゃ、出るか?」
「うるさいな!さっきも言ったぞ!俺はギブアップしないぞ!」
これで何度めだろうか。隣でアルが叫ぶ中、たびたび「帰りたい」という言葉を出すたび少し前を進んでいるアーサーがニヤニヤしながらアルをからかい、それが悔しいのかアルは涙目になりながらギブアップはせず、前に進むということが保管室から出てきてからずっと繰り返されている。
それに口を挟もうとは思わないけれど、アーサーはアルをからかい過ぎなような気もする。
(いや、一応アーサーも怖いものが苦手なアルに気を使ってるのかも……?いやいやいや、これはどう見てもからかってるだけだし、アルだってヒーローとしてのプライドがあるから絶対意地でも出口から出る気だろうしなぁ)
「……で、なおはさっきから何で何も喋らないんだい?喋ってくれよ!」
「だってさっきからずっと二人がイチャイチャしてるからさぁー?」
「なっ⁉︎イチャイチャ⁉︎やめてくれよ!アーサーとじゃなくてなおとしたいぞ…」
「なっ…‼︎イチャイチャって何だよ!おっ、おおおおお俺だって直人と……‼︎」
不意打ちの2人の俺とイチャイチャしたいという言葉にトゥンク…と心臓が高なってしまい、顔の赤みは暗闇でバレないかも知れないが無意識に口を手で覆ってしまっていた。
「あっありがとう、2人共後でイチャイチャしようね……ってなんでお化け屋敷でそんな話してるの‼︎」
「ハハッ!確かにね!」
そんなこんなで雰囲気でこんな周りにハートが飛び散るような話をしているのか今になって気づく。
何だか今の話とこのお化け屋敷の雰囲気の差で変な気持ちになってきてしまった。
(でも……我慢だ。まだ遊園地でお化け屋敷に入ったばっかりだし
ん……あ、今周りに誰もいないし…暗いし…)
近くにいたアルの手をまず握ってから少し前にいるアーサーの手を追うように後ろから握る。
「うおっ⁉︎へ、ぁ…直人…っ、て、手、おい…」
手の感触に驚いたのかバッと後ろを振り返るアーサー、その感触が俺の手だとわかった瞬間予想以上にどもっていて思わず笑ってしまった。
「今ここにいるのは俺たちだけだし手繋いだら怖くないでしょ?」
そういったら2人は嬉しそうに握り返してきてくれた。