第5章 試行錯誤と心の扉
『なぁ、裕太ん家って、父親いないのか?』
おれは、あの後裕太が「心の扉」を閉ざしていることを悟った。
(なら、まずはそこをあけてやんねーと、母親からの虐待はなくならない…)
『父?あいつ、俺がガキん時からいないよ』
────「あいつ」────
父親をあいつと呼ぶほど何か憎しみがあるのだろうか。
『そうか…母親と二人暮らしか?』
『ああ』
母親は、何らかのストレスの行き場として裕太を虐待しているのか…
俺は、想像をした。
もし、俺のかーちゃんに金属製バッドで殴られたりしたら────
背中がゾクゾクする。
でも、他人事じゃないんだ。
今、目の前にいるんだ。
そういう、悲しい思いをした人が────
『父親と何かあったのか?』
『…友達って、信用出来るもなのか?』