第1章 君との出会い
「静香、今日は帰るって言ったでしょ。早く来なさい」
教室のドアの前で私を呼んでいたのはお母さんだった。私は立ち上がって紗有ちゃんにそのことを説明すると、名残惜しそうに手を振ってくれた。そしてなんと! 葉山君も手を振ってくれたんだ。
私は顔が赤くなりそうなのを抑えようと深呼吸しながら教室を出ると、お母さんの横に行って歩き始めた。
「遅くなってごめん」
「もう、ちゃんとしてよ」
お母さんは今朝と同様に呆れたようにため息をついた。
「うぅ、そんな顔しないでよぉ」
「ったくもう、静香はほんとに弱虫ね。一人暮らしできないんじゃない?」
お母さんにそう言われて、私は声を荒げる。
「わ、私は一人暮らししないもん! ちゃ、ちゃんと結婚して、二人暮らしするんだもん!」
「あっはっは、静香をもらってくれるような男の子が現れるもんかね」
わ、笑われたよ。お母さん、ひどいぜ。
「失礼だよ!」
「そういうのは自分に言う言葉じゃないでしょ」
「ううぅ……」
結局口論になるといつも負けるんだよね。もっと滑舌良くなるようにしよう。