第10章 旅の前に
驚いたのは、火影様だ。
わたしは入学式の事件の関係で、三代目火影様にお呼ばれした。
フガクさんと一緒に。
何を言われるんだろうと、ドキドキしながら行った先で待っていたのは、予想外の言葉だった。
「ほしいものをひとつあげよう」と言われたのだ。
理由は、被害を未然に防ぎ、たいした怪我もさせず、犯人をとらえたかららしい。
きっと三代目は、6歳児の“ほしいもの”なんてたいしたことないと思っているに違いない。
ふっ、甘いな三代目。
相変わらず甘過ぎです、あなたは。ええ。
「わたしのほしいものは平和です」
なんていったら戸惑われるだろうから言わない。
妥協して、「卒業する資格」かな。
妥協してこれかよ、とか思った方、ノンノン。
わたしは欲深いんだよ。人間って欲に忠実だからさ、ね。
この案でも十分火影様は驚いていたけど(あ、フガクさんも)、最終的には了承してくれた。
そしてなんと、卒業試験をすぐに行ってくれた。
ほんとにすぐ。
火影様の前でいろいろ試された。
分身の術
変化の術
フガクさんにむかって体術
あ、クナイも投げさせられた。
不思議なことに、火影様の部屋に板があったんだよ、直径三十センチくらいの。
それを火影様本人がもって、そこになげさせる、っていう、意味が分からないものだった。
わたしは思う。
この試験おかしい!
絶対おかしい!
火影様の執務室だよ!?
なんでこんなことしてんの!?
国の機密事項とか、提出する重要書類とか、任務の報告書とか。
大切なものあるでしょうに!
とまあそんなわけで、わたしは火影様への初謁見を終えた。
そして
約束通りわたしは卒業させてもらった。