第7章 あやしい人・パート2
それからすぐ、彼は帰っていった。
と思ったらすぐに戻ってきた。
「俺、名前言ってねぇよな?」
あ。
「言ってないですね」
「ごめんな。俺の名前は、ルウだ」
「ルウさん?」
「ああ。別に呼び捨てでもかまわねーぞ」
いいのかそれで?
四歳児に呼び捨てされる大人って笑、状態になると思われるが。
うん。呼ばないよ。
「やめておきます」
「そか。じゃ、今度こそ帰るな。また二年後」
「はい、また」
彼はとんとん、と家の壁を乗り越えて帰っていった。
また二年後ってのも可笑しな話だよなー、と思いながらその姿を見送る。
さてと。
わたしも家に入りますかね。
「今日は長い一日だったな」
口に出してつぶやいてみると、意外にも響いて少し恥ずかしい。
わたしは落ちてしまっていた本を拾い上げて赤く染まる空を見上げた。
2年後わたしは旅に出る。
そのことを考えると、この景色が何故か特別なものに見えた。